工夫を凝らした画像データの活用
既存エミュレータ画面 × SOFLAiの共存
本社エントランス
本社 | 兵庫県神戸市 |
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創業 | 1930年4月 |
設立 | 1952年7月 |
資本金 | 1億円 |
従業員数 | 278名 |
事業内容 | 真珠の加工・販売 輸出および宝石・宝飾品の販売 |
URL | https://www.otsuki-pearl.co.jp/index.html |
株式会社大月真珠は、本社を神戸市、東京に支店を設ける、1930年創業の歴史ある企業である。関連養殖会社を国内2社と海外に2社有する生産者であると同時に、優れた加工技術を持つメーカーであり、真珠流通の商社でもある。その「生産・加工・販売」の一貫体制こそが同社の一番の強みであり、結果、1975年以降真珠の輸出額で業界NO.1の座を保ち続けている。
同社の創業者である大月菊男氏は1915年、当時まだ確立されていなかった真珠養殖の研究を始め、1922年には球形真珠を従来より更に大型に成長させる「球形真珠形成法」で特許を取得し、今日の大型真珠の基礎を作り上げた。また、一般的に2個入れと呼ばれる挿核技術の開発・確立などによって養殖技術の発展に寄与したオーソリティである。
昨今、IT業界では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「2025年の崖」等が話題に挙がっているようだが、同社では既に2000年代の初頭からDXを意識した基幹システムへの取組みを開始していると言っても過言ではない。
2003年、同社はSOFLAiの前身であるe’forwardを導入。
執行役員 総務部 部長(前 システム室 室長)の植原氏は「AS400のGUI化ももちろんだが、商品の写真を画面表示できることが決め手だった。」と語る。
そして2005年には、デザイン性の高い商品を扱う「宝飾部」のシステムをSOFLAi(当時はe’forward)で作り上げた。現在もプログラムの追加やメンテナンスは続いており、その数は700本を超える。
図表2:在庫明細照会
図表1:客注用在庫売上一覧照会
「情報を現場から聞いてきて、どう並べ替えるか。SOFLAiはグリッドでも自由に並べ替えられるので、順番などは現場に一任しています。ユーザーによって欲しい情報は異なるので、最低限必要な基本データだけ載せて、あとはお好きにどうぞ、という運用にしています。」と語る島本氏。現場の声を聞き、ユーザーライクな画面作成を心がけている。
例として二つの画面をあげる。一つ目は「客注用在庫売上一覧照会」(図表1)だ。二つのパネルを左右に並べ、一つの画面に集約している。“二つの画面を行ったり来たりしていると、どうしても電話対応が長くなる”という現場の声に、システム室から提案したそうだ。SOFLAiで簡単に作れるパネル形式の一覧を二つ並べ、在庫と売上を見比べることができるようになった。
二つ目は照会画面で、画像ありか画像なしを選択することができる「在庫明細照会」(図表2)。ユーザーの好みや必要性により「画像なし」ならグリッドを見せ、「画像あり」ならばパネルを見せるというユーザー目線の照会画面だ。
図表1:客注用在庫売上一覧照会
図表2:在庫明細照会
図表3:エミュレータ画面とSOFLAi帳票の連動
「SOFLAiは帳票周りで特に生産性の高さを実感している。」と島本氏は言う。文字の大小を組み合わせて配置するだけの専用のデザイナーツール『ScreenDesigner』がその理由だ。帳票等の印刷物はサイズの種類も多く、PC画面と違い細部までじっくり見ることが多いので、1枚の紙にさまざまな情報を載せることができるというのは非常に便利だという。
続けて島本氏は「品質保証書やグレーディングレポートは、写真やロゴなどを載せて印刷するのですが、SOFLAiはエミュレーションが要らないので、エミュレーション搭載の高価なドットプリンターなどを使用する必要がなく、レーザープリンタなどへの置き換えも可能になりました。」と話してくれた。そこで同社は2018年に思い切って古い帳票をすべてSOFLAiで作り変えたそうだ。
そのほかにも、非常に興味深いScreenDesignerの活用方法を編み出して、その運用を成功させている。その一つが『エミュレータ画面とSOFLAiの帳票の連動』だ。図表3の通り、入力や照会の画面はエミュレータ画面である。帳票出力指示をかけると裏でSOFLAiが起動し、ScreenDesignerでレイアウトした帳票がレーザープリンターから出力される仕組みである。
長年のAS400ユーザーの中には既存エミュレータ画面が多く、特に問題もないとの事で、エミュレータ画面とうまく調和を保ちながら進化を進めたいという企業も少なくはないようだ。
同社の場合も、特定部門のビジネスの特性により、帳票出力という限定的な機能に特化した仕組みを構築され、SOFLAiの強みをうまく発揮している好事例だ。
2018年に経済産業省より「2025年の崖」という言葉が発表された。その大きな要因の一つとして、複雑化、ブラックボックス化した既存システムがあげられている。内部構造が複雑化しメンテナンス出来ない状態に陥っていたり、不十分なマネジメントによりブラックボックス化しているシステムのまま年数が経過してしまった企業も少なくはないという。
同社においては、ソフラが早い時期から基幹システムをフルスクラッチにて提供しており、それを基盤としたSOFLAi等のツールを利用した機能追加やメンテナンスの積極的な取組みが継続されており、時代の流れに同調している。
今後に向けては、もはやモバイルデバイス対応は必須との事で次期 SOFLA2 に期待を寄せているという。
同社とはこれまで30年を越えるお付き合いの中で、SOFLAiに対するさまざまな意見やアイデアを頂戴しているユーザーの一社である。島本氏をはじめとする総勢5名のシステム室と「SOFLAi」導入決定の植原氏から、また新たなアイデアが発信される事だろう。